
はじめに
師走の足音が近づき、
一年の終わりを感じる
季節になりました。
皆さんは大晦日の夜、
お寺で除夜の鐘を
撞いたことはありますか。
子どもの頃は、
ただ鐘を撞くのが楽しくて、
意味もわからず
列に並んでいたという方も
多いのではないでしょうか。
筆者自身も幼い頃はそうでした。
しかし、
大人になってから
除夜の鐘には深い
意味があることを知り、
その奥深さに驚かされました。
一つひとつの鐘の音には、
私たちの煩悩を祓うという
大切な役割があったのです。
今回は、
日本の伝統行事である
除夜の鐘について、
その由来や意味を
詳しく掘り下げていきます。
除夜の鐘とは

除夜の鐘とは、
大晦日の夜に全国の寺院で
鳴らされる鐘のことを
指します。
この「除夜」という言葉には、
実は深い意味が
込められています。
「除」という字には、
「古いものを取り除く」
という意味と
「新しいものを迎える」
という二つの意味があります。
まさに
一年の終わりと
新年の始まりが
交わる大晦日の夜に
ふさわしい言葉と
いえるでしょう。
鐘を撞くタイミングの意味
多くの寺院では、
伝統的に107回を旧年中に、
そして最後の1回を
新年に入ってから打つのが
一般的です。
この打ち方には、
「一年の煩悩を
すべて祓い清め、
清らかな心で
新しい年を迎える」
という願いが
込められています。
旧年中に打たれる
107回の鐘の音は、
過ぎ去る一年の中で
積み重なった心の汚れを
一つずつ洗い流していきます。
そして、
新年最初の一打は、
清らかになった心で
新しい自分へと
生まれ変わる象徴と
なるのです。
静寂な冬の夜に
響く鐘の音は、
ただ耳に届くだけでは
ありません。
その音色は、
私たちの心の
奥深くまで届き、
一年を振り返り、
心を整える
貴重な時間を
与えてくれます。
なぜ108回なのか
では、
なぜ除夜の鐘は
108回撞くのでしょうか。
この数字には、
仏教の教えに基づいた
深い意味があります。
仏教では、
人の心には
「煩悩」と呼ばれる
108種類の欲望や
執着があるとされています。
煩悩とは、
私たちを苦しめ、
悩ませる心の働きのことです。
鐘を108回打つことで、
これらの煩悩を
一つひとつ祓い清め、
心を浄化すると
考えられているのです。
煩悩とは何か

煩悩という言葉は
聞いたことがあっても、
具体的に
どのようなものか
説明できる人は
少ないかもしれません。
ここでは、
代表的な煩悩を
いくつか紹介します。
主な煩悩の種類

執着する心
ものや人に対して
必要以上にこだわり、
手放せない心のことです。
「もっと欲しい」
「失いたくない」
という気持ちが強すぎると、
かえって
苦しみを生み出します。
許せない怒り –
他人の言動に対して
腹を立て、
許すことが
できない感情です。
怒りは自分自身の
心を最も傷つける
感情の一つといえます。
道理がわからず愚痴を言う
物事の道理や
因果関係を理解せず、
不平不満を
口にすることです。
愚痴は
周囲の人にも
悪影響を与えます。
おごり、高ぶり
自分を過大評価し、
他人を見下す心です。
謙虚さを失うと、
成長の機会を
逃してしまいます。
正しいことを疑う –
真実や正しい教えを
素直に信じられない
疑いの心です。
懐疑的すぎると、
大切なものを
見失ってしまいます。
身体への執着
自分の体や
外見に対して
過度にこだわる心です。
見た目だけに
とらわれると、
本質を見失います。
極端な思考
物事を白か黒か、
善か悪かと
極端に判断する
考え方です。
柔軟性を失い、
バランスの取れた
判断ができなくなります。
因果応報を知らない
自分の行いが
未来に影響を
与えることを
理解していない
状態です。
行動の責任を
自覚できません。
間違いを正しいと思い込む
誤った考えや
行動を正しいと
信じて疑わない心です。
自己正当化により、
過ちを繰り返してしまいます。
誤った考えを信じる
真実ではないことを
真実だと信じ込んで
しまうことです。
偏見や先入観により、
正しい判断が
できなくなります。
これらはほんの一部ですが、
108種類の煩悩には、
私たちの
日常生活で直面する
様々な心の働きが
含まれています。
108種類の煩悩一覧はこちら
ウィキペディアの除夜の鐘はこちら
除夜の鐘が持つ現代的な意味
現代社会を生きる
私たちにとって、
除夜の鐘は
どのような意味を
持つのでしょうか。
日々の忙しい生活の中で、
私たちは
知らず知らずのうちに
様々な
ストレスや執着を
抱え込んでいます。
SNSでの承認欲求、
仕事での競争心、
人間関係での悩み。
これらもまた、
現代版の煩悩と
いえるかもしれません。
除夜の鐘は、
そんな私たちに
一年を振り返り、
心をリセットする機会を
与えてくれます。
鐘の音を聞きながら、
この一年で
自分が何にこだわり、
何に執着していたのかを
静かに見つめ直す。
そして、
それらを手放し、
新しい年を
清らかな心で迎える。
これは決して
宗教的な行為だけではなく、
メンタルヘルスの観点からも
意味のある時間なのです。
まとめ
除夜の鐘は、
単なる年末の
風物詩ではありません。
一つひとつの鐘の音には、
私たちの心を浄化し、
新しい自分へと
導く力があります。
今年の大晦日は、
ぜひ近くのお寺を訪れて、
実際に鐘を撞いてみては
いかがでしょうか。
もし
鐘を撞くことができなくても、
鐘の音を聞きながら、
この一年を静かに振り返る
時間を持つだけでも、
心が整うはずです。
108回の鐘の音とともに、
執着や怒り、
不安や焦りを手放し、
清らかな心で
新しい年を迎えましょう。
除夜の鐘が響く静寂な夜は、
自分自身と向き合う
貴重な機会となるでしょう。
一年の終わりに響く
鐘の音が、
皆さんの心に
平安をもたらし、
希望に満ちた新年への
架け橋となりますように。
よろしければ、他のきじもご覧ください。
